お知らせ

実験講座 in 芝浦工業大学柏中学高等学校
~国際化学オリンピックの実験課題にチャレンジ!~

2026年3月16日


総勢25人の中高生が芝浦工業大学柏中学高等学校の化学実験室に集まった

 2025年12月13日(土)に芝浦工業大学柏中学高等学校で実験講座が開催されました。昨年も行われたこの講座では、中高生たちが、過去に国際化学オリンピックで出題された“大学レベル”の実験課題に挑みます。講座の最後には、2024年のサウジアラビア大会の出場選手3人からオリンピックへの出場方法や楽しかった出来事などの紹介もあり、国際化学オリンピックを身近に感じられる1日になりました。

大学生が高校生に化学の面白さを伝える

 2025年12月13日、芝浦工業大学柏中学高等学校の化学実験室に同校の15人をはじめ、千葉県立船橋高等学校から7人、市川学園市川中学校・高等学校から3人の総勢25人の中高生が集まりました。土曜日の午後の時間帯を使って、「国際化学オリンピックで出題された実験」にチャレンジしようというのです。企画したのは、昨年まで芝浦工業大学工学部の准教授だった廣井卓思先生。現在は早稲田大学先進理工学部の准教授として教鞭をとっています。自身も2007年に国際化学オリンピック ロシア大会に出場しており、「“大学レベル”の難しい実験の本当の面白さを伝えたい」という思いから、2024年にもこの実験講座を行い、2025年は本委員会も共催しました。

 実際に中高生たちを教えるのは、芝浦工業大学の「これコンケミカル」という化学サークルに所属する大学生たちです。廣井先生と事前に打ち合わせをしていますが、講座当日は試薬の準備から実験の指導、最後の実験解説までのすべてを行いました。「これコンケミカル」のメンバーにとっては、“後輩たちに大学の化学の面白さを伝えられる貴重な機会”になっています。

最初に実験計画を練る。これをしっかりやったかどうかで、この後の実験の成否が決まってくる。各班に1人の大学生がついて指導した

アセトンのヨウ素化反応を実験して反応速度式を求める

 今回は、2012年のアメリカ大会で出題された「酸性水溶液中でのアセトンのヨウ素化反応」の実験を行いました。この反応では、ヨウ素の黄褐色が消えていくので、反応にかかった時間を視覚的に知ることができます。これを利用して、条件を変えながら反応にかかった時間を何度も測定しました。この測定結果を基に、「アセトンのヨウ素化反応の『反応速度式』」を求めました。

試薬を混ぜ、ヨウ素の色が消えるまでの時間を測定。正確に測定するのはなかなか難しい

 実験の後半には、「重水素化アセトンは高価な試薬なのでこぼさないで下さいね」と廣井先生から声がかかりました。重水素化アセトン(アセトン-d6)とは、アセトンの6つの水素(H)すべてを同位体である重水素(D)に置換した物質です。これを使ってヨウ素化反応を行うと「アセトンのヨウ素化反応で結合が組み変わっていく際の、最も遅い『律速段階』の反応」を推定できます。重水素化アセトンのように学校の化学実験室にはない珍しい試薬を使って実験ができるのも、この講座の醍醐味のひとつです。

重水素化アセトンで反応時間はどう変わる? 

どうしてこうなるのかな?と考察中

難しくても充実した学びの時間に

終了後、参加生徒たちに今日の実験講座の感想を聞いてみました。

  • 「反応速度論は学校で勉強したばかり。この実験は授業よりずっと難しかったですが、とても勉強になりました!」
  • 「当てずっぽうに実験を始めてしまったのですが、ちゃんと計画を立ててからやらなくてはいけなかったんですね。大学生がサポートしてくれたので何とかやり遂げられました」
  • 「実際にやったことは忘れないので、これで反応速度は絶対に忘れません」
  • 「僕らは初対面でしたが、協力してスムーズに実験できました。実験もコミュニケーションを取りながら進めるのが大切なんですね」
  • 「化学は苦手なんですが、今日の実験はすごく面白かったです。解説の途中から分からなくなってしまったんですが、あれは大学で学ぶ内容ですよね?」
  • 「普段は時間がないので決められた実験をやることが多いのですが、今回は、実験の手順から自分たちで考えられたのが楽しかったです」
  • 「最後の解説は大学レベルで、将来こういうことを勉強するんだと分かったことが嬉しかったです。視野が広がったと感じられました」

大学生の反応速度論の解説に聞き入る

どのコメントからも、学びの多い充実した時間を過ごせたことが伺えました。廣井先生も、「最後に大学生が解説をしていた時には『ああっ!』といった反応が見られて、考察まで含めてしっかり理解してもらえたと思いました。今回の実験講座を通して、高校で学ぶ反応速度論について“一歩進んだ知識を得られた”と感じてもらえたら嬉しいです」と学校での普段の学習が深められたと手応えを感じていたようです。また、「まだまだ紹介したい実験はたくさんあるんですよ」と話し、次は、どこの学校でどんな実験講座が開かれるのかが楽しみです。

最後に2024年サウジアラビア大会に出場した3人が、国際化学オリンピックの体験談を話してくれました。化学の課題に取り組むことが大事なのはもちろんですが、国際化学オリンピックでは、国内外の化学好きと知り合い交流してお互いに刺激し合えることが重要なようです。こうして実験講座は国際化学オリンピックの魅力が詰まった時間になりました。

2024年サウジアラビア大会に出場した3人のプレゼンの様子
ありがとうございました!

取材・執筆:サイエンスライター 池田亜希子
イラスト:DepositPhotos™